The Loginakata:導師と初心者の対話
Original article: The Loginataka (Dialogue between a Guru and a Newbie)
(これは Usenet の何人かの熱心な初心者の質問に答えたものが元になっている。)
おお、導師よ、お話しください。どうやれば Unix のウィザードになれるでしょうか。
おお、高貴な生まれの者よ。ウィザードへの道は長く曲がりくねっていて、危険に満ちていることを知れ。 汝はソースに自らを順応させ、システムライブラリと内部の対話の秘術を会得しなくてはならん。 まあ、あまり時間を取られ過ぎ、エネルギーを消耗しすぎると、学校の成績(もしそういうものと関係があれば)やら、性生活(もしそういうものと関係があれば)に深刻な危機を招くことになろう。しかし、おお、幼き者よ、困難を堪え忍び、夢見る一般ユーザたちの彼方に汝を待ち受ける報酬を受けよ!
お話しください、導師よ。どんな本を学べばよいでしょうか。オライリーの「Nutshell」ガイドは出発点として適当でしょうか。
おお、高貴な生まれの者よ。Nutshell ガイドは真の悟りからもっとも遠い入り口である。それらは価値があるが(そしてオライリーの名は讃えられよ、彼の本はハッカー精神を多くの楽しい方法で促進してくれるのだから)、しかし Nutshell ガイドは道のりの始まりに過ぎん。
もし汝がウィザードの知恵への道へ踏み入れようと真に望むのであれば、まず Kernighan & Pike の基礎的鍛錬『Unix プログラミング環境』を学べ。それから March Rochkind の司祭権力『先端 Unix プログラミング』を吸収せよ。
それから Maurice J. Bach の純粋な光『Unix オペレーティングシステムの設計』に没頭せよ. それから Kirk McKusick、Keith Bostic らの『4.4BSD オペレーティングシステムの設計と実装』も学べ、バークレイ道を無視してはならんからのう。
役立つヒントや小技や仕掛けについては Tim O'Reilly 編『Unix パワーツール』がよかろう。恐怖の黙想『ポータブルな C と Unix システムプログラミング』から得られる暗い知識も考慮にいれた方がよい。それは無知な連中が「J. E. Lapin」と間違って名付けた Malvernite の呪われた狂気のキーボードからあふれ出てきたものじゃがのう。
これらの大著は左脳に Unix システムの本性を教え込むであろう。反対の脳に教え込むには、おお、高貴な生まれの者よ、同様にその文化を奉じねばならん。Don Libes と Sandy Ressler の『Life With Unix』は汝の歩みを間違いなく正しい道に導くであろう。Eric S. Raymond と Guy L. Steele Jr. 編『新ハッカー辞典』という、移り気だが生き生きと描写された要約を旅の道連れとして携えよ。
(この知識とともに汝は駱駝の道を旅せよ。)
お話しください、おお、導師よ。マスターの称号を得るにはどれほど多くのカーネルをばらばらにして再び組み直さなくてはならないでしょうか。
おお、高貴な生まれの者よ。汝が Unix についての言葉に言い表せない真実にふれていることをこの質問は明らかにしたぞ。汝は学ぶだけでなく実践によらなくてはその神秘を了解することはできぬ。ソースの知識への真実の道は、学生の小心でつまらない方法ではなく、神聖で愚かなハッカーの道である。ハックせよ、それから困難な問題と闘い、闘いの中に喜びを見いだし、失敗に身をまかせよ(その間、汝の宿命を守るため、バックアップはきちんと取るように)。
(汝はこれらの知恵とともに獅子の道を旅せよ。)
昨今の、起動時自動コンフィグレーションと動的読み込みデバイスドライバの時代において、カーネル再構築は、もはや人をおじけづかせる試練でも、マスターへの封印でもない。しかしながら、見慣れぬハードウェアのためのデバイスドライバを書いたり試したりすることは、いまだに汝の芽生えかけた導師の道への貴重な挑戦となる。まったく、そのような挑戦は今日のオープンソースの時代において、利用できるツールを拡張したり完成させたりして、プログラムを十分に強化する工夫などに見いだすことができる。
それゆえに、オープンソース Unix を探せ、OpenBSD、FreeBSD、NetBSD そしてとりわけ Linux だ。それらを絶えず改善しようと働いているウィザードの世界に参加せよ。彼らと共同でそれらの偉大な仕事、絶えず Unix を拡張し再発明する仕事に参加せよ。これらの知恵とともに、汝は強者の一人となるであろう。
お話しください。おお、導師よ。ウィザードへの唯一の道で、右脳思考のハッカーの正しい道とは、スクラッチから Unix のカーネルを書き換えることだと言う人がいます。これは神の冒涜ではありませんか?
冒涜とな、高貴な生まれの者よ?否、確かにカーネルソースは Unix の最も内なる神秘であるが、神秘をさらにこえた神秘がある。Unix の本性はなんらかのバージョンにではなく、 Unix が進化するすべての道筋における設計の伝統に内在しているのである。
カーネル書き換えの儀式はマスターへのただ一つの道ではないが、すべての道の中で最も高く神聖である。実装完了という名の暗くぱっくりと開いた深淵を横切ってこれたものはほとんどいない。多くの者たちが、まさに、未だに遅れの砂漠の中で沈滞しており、「永遠のベータ版」と呼ばれる身の毛もよだつ地獄の辺境にさまよっているのである。
お話しください、おお、導師よ。それでは、ウィザードへの真の道とはなんでしょうか。
おお、高貴な生まれの者よ。学べ、そして自らの内なる世界を探せ。蛇のずるがしこさと虎の勇気を培え。汝よりも先に来たものたちの知恵を深く消化せよ。ハックし、さらにハックせよ。試行錯誤を経て育て。ネットに汝の最高のハックを投稿し、そこで名声を勝ち取れ。また、おお、高貴な生まれの者よ、汝の発言は鄭重であれ。自分より未熟なものは助けてやれ。口論から遠ざかり、援助はすぐに施せ。
汝がこれらのことを誠実に行ない、高き心と純粋な志で旅するならば、ただちに汝の青臭い未熟さを払い捨てられよう。だんだんと知らず知らずのうちに、闘いと修練を積みながら、汝は力と知恵を得て行くだろう。徐々に汝の勢力は開き深まるだろう。
おお、高貴なる生まれの者よ。もし汝がこれらすべてのことをやりとげれば、汝のウィザード性は確かに汝に来るであろう。しかし、それは急には来ない。汝の傲慢な心やその目的やらがが半ば以上忘れ去られるまでは。ウィザードの外套を自ら要求してはならん。それは終わりのないばかばかしさへの道だ。
いつになるかはわからぬが、汝の力をハッカーたちが敬い、また他のウィザードたちが汝を知恵の兄弟姉妹として讃え、汝の肩の上に知らぬ間に外套が置かれるまで、日々修練に励め。
(これらの知識とともに汝は童子の道を旅せよ。)
SHANTIH! SHANTIH! SHANTIH!